税理士川端雅彦コラム

KAWABATA MASAHIKO COLUMN

vol.25「マーケティングオリエンテッド」

ジョージ・ソロス。皆さんもご承知のとおり、マレーシアのマハティール首相に「アジア通貨混乱の張本人」と揶揄され、世界の通貨当局から恐れられている大富豪である。彼は、「6月16日にタイバーツを1000万ドル分売ったのを除けば、過去2年間にマレーシアやタイの通貨を売っていない。」と英ファイナンシャル・タイムズ紙で報じており、真相は明らかではないが、彼が「外国為替市場で動いている。」という噂だけで、相場が動くほど影響力のある人物である。一方で、慈善活動に精を出す「民主運動家」としての顔を持ち合わせる謎の人物とされている。
ここで彼の人物像についてうんぬんする気はないが、彼の相場に対する考え方は、経営者にとって非常に参考になる。
 彼の相場感の根底に「反射理論」といわれるものがある。その理論とは次のようなものである。将来、ある国の経済発展はこうなるであろうという理論により形成される相場には、必ず人々の「期待値」が入り込む。そして実際に起きる事実と、バイアスのかかった人々の認識のギャップに目を付け、事実に基づいた価格に収斂するまで、通貨を売ったり買ったりして、儲けるのである。
これがずばり的中し、彼の名を一躍はせさせたのが、92年9月のポンド売浴せである。当時彼は、「景気が低迷している中、ポンド切り下げは必定」と読み、「ポンド切り下げなどありえない。」としていた英国中央銀行に対抗、100億ドルを売浴せ、一夜にして10億ドルを稼ぎ出したのである。
 彼の様々な批判に対し「私が金持ちになったこと自体、市場が完璧でない証拠じゃないか。そのことがお見通しだったから、金持ちになったのだ。」と一蹴している。この市場の不完全性を「ビジネスチャンス」に結び付ける考え方は、企業家に要求されることとイコールではないかと感じるのである。
 革新的な事業を展開した企業家の多くは、マーケットが要求していることと、マーケットに提供されている現存のサービスや商品とのギャップを見つけだし、そのギャップを埋めるサービスや商品を提供した結果、今日の基盤を作り上げている。そしてそのギャップの埋め方が、他と違うユニークな方法で実現しているのである。
 和歌山に縫製機械を作る島精機製作所という会社がある。ニット製品用の横編み機で世界市場の6割を押さえる会社である。繊維業界は最も人件費の安い国を求めて、生産拠点を移動させるのが常であり、石油ショック、円高と相まって、日本においても最も空洞化が進んだ業界である。
そのような環境下、同社の島社長は変化する市場ニーズを敏感に感じ取り「構造不況でも服の市場がなくなることはない。とはいっても、大量生産はもう続かない。そこに新商品の入り込む隙間はあるはずだ。」と考えた。そして、ニットメーカーが日本に残るには「完全に人手を無くせる機械」しかないと考え、「完全無縫製型横編み機」を開発するに至ったのである。従来の編み機はセーターの前部分、後部分そして袖と個別に編みこんだ後、ミシンで縫合せるのが普通だったが、この機械は一体化した状態で編み上げるため、縫合せのための人手が全くかからないのである。
 95年10月にイタリアのミラノで開催された国際繊維見本市で、業界関係者に「他社の8年先を行く。」と絶賛され、この分野で世界のトップになったのである。伊ベネトン社にもすでに2000台納入している。まさにマーケットの不完全性を敏感に読み取り、だれも考えなかった「逆張り」の製品開発を成し遂げたのである。そして、日本には、世界を席巻するこういったメーカーが少なからず存在するが、共通して言えることは製造業というよりもマーケティングカンパニーであるということである。いつも顧客の近くに製品開発部隊の身を置き、ニーズをつかまえ、あるいは変化を読み取って製品開発に生かす、あるいは先手を打っているのである。その仕組は、開発と営業が一緒に動くマーケティングオリエンテッドな組織なのである。
 考えて見れば、この島精機製作所も構造不況業種に位置し、倒産寸前の危機にさらされた会社だったのである。このように企業家は、構造不況業種だからという外部要因によって、自社の将来を決定づけるのではなく、マーケットの要求によって自社の将来像を描くべきではなかろうか。

2003/09/17

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