税理士川端雅彦コラム

KAWABATA MASAHIKO COLUMN

スジの悪い平成18年税制改正大綱!発見!?

12月15日に与党の平成18年度税制改正大綱が発表された。

ざーっと眺めてみる定率減税の廃止など増税路線を踏襲した改正や、中小企業の留保金課税の軽減など、政策的な配慮から減税となるものまで色々と混在している。

ただこの中で、同族会社である中小企業にとって増税となる見逃せない改正が、ひそかに紛れ込んでいる。

それは「実質一人会社のオーナーの社長一族の報酬について、給与所得控除に相当する額を、法人で損金に算入しない。」という「役員報酬の損金算入のあり方の見直し」という改正項目である。

例えば、夫と妻が取締役で、給料を年1000万円づつ取っており、その結果、会社の利益(所得)が500万円となるケースで考えてみよう。

この場合、夫と妻は、それぞれ給与収入1000万円であるが、給与所得控除(サラリーマンの必要経費)が220万円づつ認められることになり、給与所得としては1000万円−220万円=780万円となる。

この計算は、そのままなのだが、この220万円×2人分を、法人の所得に加算しなさい!というのである。

したがって、この場合、法人の所得は500万円+440万円=940万円となります。

つまり、個人の給与所得控除に相当する金額を、法人の所得に付け替えるというウルトラC級の増税策なのである。

この適用を受ける法人をもう少し詳しく言うと

同族関係者で株式の90%以上を保有し、常務に従事する役員の過半を占める会社

と定義されています。(今後、解釈については通達などであきらかになるでしょう、)

当社のお客さまで、ざーっと調べたところ、ほとんどの法人がこの定義に当てはまってしまいます。

つまり、ほとんどの中小企業が増税になるのです。


この改正による課税の趣旨は、

個人事業者が法人形態を取れば、オーナー社長の報酬について、法人にとって損金になる。

かつ個人にとっても給与所得控除が利用可能なので、経費の2重控除となる。

今後の新会社法で最低資本金が撤廃されたら節税目的の法人なりが容易になる。

よって、これを阻止しようとするものなのです。


私は、この改正は非常に筋が悪いと思う。

第一に、個人のサラリーマン経費を法人に付け替える課税の根拠が希薄である。

法人にとっては、給料として既に社外に出ているのに、一部加算されるという理不尽さが伴う。

それなら、給与所得控除を縮減すれば、スキッとするのだが、これだとサラリーマン全員に影響が出る。したがって、このような付け焼刃的なやり方を考えたのだろうと思う。


第二に、新会社法による企業意欲を削いでしまうからである。


最低資本金が撤廃されることにより、節税を狙って法人なりする人がでてくるだろうが、節税を狙って起業する意図がない事業家をどのように区別するのであろうか。

あるいは、資本金1000万円で起業する人は適用除外になるのだろうか!


税制は、その国の経済活動に大きな影響を与えます。

この増税を回避するために、役員にふさわしくない従業員を役員にしたり、いろいろな方法が開発されていくことでしょう。

それが、スジのいい方法であればいいのですが、スジの悪い増税策にはスジの悪い節税策がつきまとうのです。

京都・大阪の税理士ならアイネックス税理士法人

2005/12/20

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