生成AIと相棒になるということ
ここ数年で驚くほど急速に普及した生成AIは、すでに多くのビジネスシーンで欠かせない存在となりつつあります。かつては一部の専門家や技術者のための道具と見られていたAIですが、今では営業、経理、企画、人事など、あらゆる部門のビジネスマンが日常的に利用できるレベルにまで進化しています。
そこで今回は、AIが我々の業務に、どのような影響を与えるのかを探ってみたいと思います。
1.生成AIがもたらす業務への影響
① 定型業務の効率化
ビジネスマンの多くは、メール作成、議事録まとめ、報告資料のドラフト作成といった定型業務に多くの時間を割いています。例えば、そういった議論や報告を録音し、生成AIに放り込むことで、これらを瞬時にテキスト化し要約でき、従来1時間かけていた業務報告書が数分でできるようになります。結果として、人間はより付加価値の高い業務に集中できるようになります。
② 情報収集・分析力の強化
AIは膨大な情報を短時間で整理するのに優れています。市場動向のレポート作成や競合比較表の作成、法改正の要点まとめなど、人間が一から調べると数日かかる作業を数分で提示可能です。これにより意思決定のスピードが格段に上がり、経営判断の質も向上します。
③ 発想力の拡張
AIは「答えを出す」だけでなく「アイデアを生む」パートナーにもなります。新規事業の企画、広告コピーの発想、営業トークの改善案など、人間だけでは出てこなかった多角的な視点を提供します。特にブレインストーミングの初期段階で有効です。
④ 人材評価と教育の変化
AIによる自動翻訳や文章生成の精度が高まることで、従来求められていた一部スキルの重要度は相対的に下がります。その一方で、「AIをどう使いこなすか」もう少し具体的に言うと、「プロンプトをいかに設定するか」というメタスキルが新たに重要視されることになります。
2.業務における具体的な活用方法
① 営業職での活用
- ・メール作成の効率化:顧客属性や過去のやりとりを入力すれば、最適な営業メールの下書きをAIが生成。表現を少し整えるだけで即送信可能です。
- ・営業トークの事前練習:想定質問をAIに投げかけ、回答パターンをシミュレーションすることで商談準備が容易になります。
- ・顧客データの分析:購買履歴やアンケートをAIに解析させ、潜在ニーズを抽出することも可能です。
② 経理・財務部門での活用
- ・仕訳や経費精算の自動化:領収書データをスキャンしてUPすれば、自動的に仕訳候補を提示。担当者は承認作業に専念できます。
- ・シナリオ分析:売上やコストの変動要因を設定すれば、複数のシミュレーション結果を瞬時に提示し、経営陣の意思決定を支援します。
- ・法改正対応:税制改正の概要をAIに要約させ、自社への影響を整理させることも可能です。
③ 人事・総務部門での活用
- ・求人票の作成:必要な条件を入力すれば、わかりやすく魅力的な募集要項をAIが生成。
- ・研修教材の準備:業界の最新トピックを基にした研修資料をAIが下書きし、担当者は微修正するだけで完成します。
- ・社内規程の整備:モデル規程をAIに参照させ、自社向けにカスタマイズした草案を短時間で作成できます。
④ 経営企画・マーケティング部門での活用
- ・市場分析レポート:特定キーワードに基づいて競合の動向や市場規模を整理。これにグラフ化を加えれば、即座に会議資料として活用可能。
- ・広告コピー・キャッチフレーズ生成:複数案を提示させ、選定・修正を行うことで短時間で完成度の高いコピーを得られます。
- ・シナリオプランニング:AIに未来予測を複数パターンで生成させることで、リスク対策や戦略立案が容易になります。
生成AIは、ビジネスマンの業務を大きく変革させる可能性を秘めています。それは、「単なる自動化ツール」としてではなく、「新たな価値を創造するための知的パートナー」として活用することも大いに期待できると考えています。
例えば、当社の業務に当てはめてみると、AIの高度なデータ分析能力と予測機能を駆使して、クライアントに対して未来のキャッシュフロー予測、リアルタイムでの経営リスクアラート、業界ベンチマークとの比較分析といった、従来は提供が難しかった新しいサービスを展開することも可能になると思われます。
AIを「敵」とみなすか「相棒」とみなすかによって、今後のビジネスの盛衰は大きく影響を受けることになるでしょう。私たちはいま、その分岐点に立っています。
令和7年9月18日
アイネックス税理士法人
代表 川端雅彦
2025/09/18