日本代表、奇跡の逆転劇から得たもの
■ 歴史を変えた夜
10月14日、東京スタジアム。日本代表は世界王者ブラジルを相手に、前半0対2と劣勢に立たされていました。私を含め、誰もが「今日の相手は強すぎる」と感じたと思います。
ところがどっこい、後半、日本は見事な3得点で逆転。最終スコアは3対2。日本がブラジルに初めて勝利するという、歴史的な瞬間が訪れました。
スタンドの興奮と、ピッチ上の選手たちの笑顔。その裏には、単なる「勢い」ではなく、組織としての強さと明確な目標意識がありました。そして、試合後に森保一監督や選手たちが口を揃えて語ったのは、驚くほど高い視座の言葉——
「ワールドカップ優勝を目指して」
この一言に、私は経営者として大きな示唆を感じました。
では、なぜ日本は、絶望的な状況を覆すことができたのか。私なりに考えてみました。
前半の2失点。普通なら焦りや落胆がチーム全体に広がります。私もチャンネルを変えようかとも思いました。
しかし、日本代表はハーフタイムで冷静に立て直しました。
「まだいける」「次の一手を打とう」と切り替えた。つまり、“メンタルの再構築”ができたのです。
企業でも同じです。売上が落ち込んだ、競合に負けた——そんな時に最も重要なのは、「動揺ではなく、修正」。事実を受け止め、次の手を練る。この力がある組織は、必ず再浮上します。
そして、後半。日本はブラジルに対して猛烈なプレスをかけました。森安監督がいつも求めるボールを持たない時のプレッシャーがやっと結果を出しました。
ブラジルのディフェンダーが、ゴール前で南野に横パスをカットされるという信じられないミスを誘発し1点目を許したのです。
その結果、ブラジルの攻撃リズムが崩れ、日本の勢いが生まれました。
加えて、後半に投入された伊東純也選手のスピードが試合を変えました。
状況に応じた布陣変更、選手の役割再定義——森保監督の柔軟な采配が勝利を呼び込みました。
経営においても市場が変化する時、同じ人・同じ体制で戦い続けることはリスクです。人材の再配置、新しいリーダーの登用、方針転換。変化を恐れず「今必要な布陣」を選べるかが、勝敗を分けます。
■ 高い目標が生む“現場力”
試合後のインタビューで印象的だったのは、森保監督や選手たちの言葉でした。
『日本とブラジルの差は、もう縮まりつつある。この勝利は通過点。目指すのはワールドカップ優勝です。』
通常であれば、「ブラジルに勝てたことを誇りに思います」で終わるところです。しかし彼らは、すでにその先を見据えていました。
Jリーグを立ち上げた当時の川渕チェアマンが掲げた2050年にワールドカップで優勝するという壮大なビジョンが、その時期を待たずして達成できるかもしれないという予感を感じさせるコメントでした。
企業経営においても、志の高い本気のビジョンが社員の意識を引き上げることにつながり、段階を追った目標と計画を立て、手を抜かず実行すれば、ビジョンは実現できるという面において、大変参考になると思いました。
日本代表は、劣勢からでも勝利を信じ、戦術を変え、最後まで手を抜かず、走り続けました。些細なことにも手を抜かずやり続けること、そうすることで、「神様がご褒美を与えてくれる」という、岡田元監督の言葉が思い出されました。
この日、久しぶりにお酒を抜こうと思っていた私ですが、試合終了後も興奮覚めあらず、自分で勝手にご褒美と銘打って、祝杯を上げながら、眠りについた記念すべき日でありました。
令和7年10月16日
アイネックス税理士法人
代表 川端雅彦
2025/10/16