テクノロジーが照らす「希望」と「現実」――ドジャース観戦帰りの夜に考えたこと
7月4日・5日の二日間、ロサンゼルスはこれぞカリフォルニア!と言わんばかりの快晴。青空の下、はドジャーススタジアムへと足を運びました。
お目当てはもちろん、我らが大谷翔平選手。独立記念日のにぎやかな空気と、世界最高峰の野球が交錯するこの日、会場の熱気は試合前から最高潮。
けれど、初戦はまさかの「1-18」というスコア。ドジャースの投打ともに沈黙し、「明日は大谷が投げるから大丈夫さ」と、どこか諦めと期待が混ざった感覚で帰路につきました。。
そして迎えた7月5日。実はこの日は、大谷選手の30歳の誕生日。
私は“Happy Birthday Shohei”とプリントされたTシャツを着込み、
その上からOHTANI 17のドジャースのユニホームを羽織って、気合
十分で球場入りしました。周囲にも同じユニホームを着たファンが
てんこ盛りで、スタジアム中が、大谷への祝福ムードで満たされていました。
この日、大谷はついに二刀流再始動に向けたマウンドへ。2回を投げ、無失点。球速も威力十分、制球も安定し、何よりその佇まいが違いました。フォームはもちろんですが、彼の放つ“静かな集中力”とでも言いましょうか。汗一つかいていないかのような落ち着きが、スタジアム全体に伝播し、観客も自然と静かに見守るような空気に。
技術、体力は言わずもがなですが、彼の凄さは「心の持ちよう」にあると、改めて感じました。大敗の翌日でもブレることなく、ただ自分のやるべきことを淡々とこなす姿。誕生日であろうと、浮かれることもなく、しかしファンの声援にはしっかりと応える姿勢――その全てが“大谷翔平”という存の特別さを物語っていました。
試合自体は白熱し、スタジアムも声援で揺れ動くほどの盛り上がり。結果は4-6で2連敗でしたが、大谷の2刀流をスタジアムで見ることができて大満足でした。
そして、ドジャース観戦の帰り道。スタジアムの余韻に浸りつつ、3人でUBERを呼びました。車が到着し、私は運転手の隣に座りました。車内は清潔で静か。ふと足元に目をやると、驚いたことに、運転手の両足は膝から下が義足でもなく、完全にありませんでした。思わず息を飲みましたが、その運転手は明るく、礼儀正しく、そして何より運転が非常にスムーズで安心感がありました。「どんな状況でも人は働ける。テクノロジーがその可能性を広げてくれる」。そう実感した瞬間でした。自動ブレーキやアクセル補助装置など、今や運転技術の補完はここまで進んでいるのだと。
しかしその翌日、ロサンゼルス市内を歩いていたときに、私はさらに強烈な“未来”と出会いました。白いクルマが静かに止まり、誰もいない運転席のまま人を乗せて走り去っていく――完全自動運転のタクシー、「Waymo(ウェイモ)」でした。運転手不在、まさにSF映画のような光景が、すでにこの街の日常になっているのです。
昨日出会った足のないUBER運転手の姿と、この“無人タクシー”が頭の中で重なりました。テクノロジーは、身体的ハンディキャップを抱えた人々に新たな就労の道を提供する一方で、その仕事自体を不要にする方向にも進んでいるのです。
これは決して矛盾ではなく、「技術の進化が持つ二面性」そのもの。誰かの希望が、別の誰かの職を奪う。けれど、それを止めることはもうできない。
その一方で、ふと思ったのは「日本ならこれはいつ実現するのだろうか?」という疑問でした。日本のタクシー業界は、長年にわたり厳しい規制で守られています。運転手の資格、車両の仕様、迎車料金、営業エリア…。それらの規制が安心や品質の裏付けになってきたことも事実ですが、いまやその“安心”が“停滞”に変わりつつあるのではないかと感じました。
アメリカでは、既存業界の反発よりも技術革新のスピードを優先し、社会全体の効率性や利便性を高めようという意志が感じられます。特にモビリティ分野ではその傾向が顕著です。規制緩和が次のイノベーションを呼び込み、雇用の形も新たに変化していく。
一方の日本では、「規制」はしばしば「既得権益」の名のもとに温存され、テクノロジー導入は慎重どころか腰が重い印象すら受けます。そこに、これから訪れる“無人”という革命は、果たしてどこまで対応できるのでしょうか。
足を失ってもなお誇りを持って働くUBERの運転手。人すら不要になりつつある無人タクシー。そして、それらが共存する社会。私はこの短い旅のなかで、未来と現実の交差点に立たされたような感覚を味わいました。
これからの時代、日本がテクノロジーの波にどう乗るのか。産業構造と規制のあり方、そして「人が働く意味」は、大谷翔平の二刀流と同じくらい、問いかけを続けていくべきテーマなのかもしれないと思った大谷翔平観戦ツアーでありました。
2025.7.15
アイネックス税理士法人
代表 川端雅彦
2025/07/15