環境変化に対応できる企業を作るということ
日銀がYCC(イールドカーブコントロール)を柔軟化する方針を打ち出しました。簡潔に言うと、今まで長期金利の上限を0.5%としていたものを、1.0%まで許容するということです。
したがって、これに伴い、中小企業が資金調達する金融機関からの固定金利が、今後上昇する可能性があるという事になります。
これにより、いままで低金利下において、なんとか生き延びてきた借り入れ依存度の高い中小企業は、今後、退出することを余儀なくされる可能性が高まります。
また、利益を確実に稼ぎだしていた企業の収益性も低下することが想定されます。
これらを踏まえて、各企業は、生産性を高めることで、高収益体質をつくることが必要となってきます。
以前にもお話ししたかもしれませんが、生産性を高めるためには、突き詰めて言うと、社員の成長を加速させるということが、一丁目一番地の方法だと思います。
収益性の高い企業を観察すると、そこで働く従業員の皆さんの成長スピードが速いことが見て取れます。
成長とは、今までできなかったことができるようになることです。次に、今まで2時間かかっていたことが1時間でできるようになることです。さらに、今までと同じ1時間で、より多くのアウトプットを生み出すことができるようになることを言います。
つまり、社員が成長している会社の労働生産性は高くなり、労働生産性が高くなるとその結果として収益性が高くなるわけです。
ところが収益性の低い企業を見ていると、社員の成長が著しく低いことが見て取れます。加えて、こういう収益性の低い企業は、やる気のある新人を採用できたとしても、残念ながら転職してしまう傾向があります。
こういう低収益に喘いでいる企業の多くは、社員の成長を促すこと、社員が成長することが、そもそも「目標」となっていないのです。
社員が成長することが、生産性を上げ収益性を上げる原動力となっていることに気づいていないのです。
したがって、社員の成長を促すことを、経営目標の一つにとどまらず、最優先の目標として掲げることから始める必要があります。
そして、各管理者に「部下の成長を実現することが自分の目標である」と自覚してもらわなくてはなりません。つまり、自分の部下の成長が、自分の目標となっていないものは、上司たる資格はないと伝える必要があるわけです。
もちろん経営トップは、自らの成長を目指すとともに、経営陣の成長を目標とする必要があります。
そして様々な会議、MTGにおいて、能力開発というテーマで、部下の成長の進捗状況を報告してもらうことを日常とすることが大切です。
このようにして、社員が育ってくると、例えば、今まで10人でできたことが、5人でできるようになり、5人で出していた成果が、今までの倍にまで引き上げることも現実的となります。
このようなことが実現できると、社員の成長が加速すると収益性が高まるため、社員の待遇を改善することができます。
待遇が改善されると、労働市場における競争力が強化されるので、今までにない潜在力のある優秀な社員を採用することができるという好循環を生むことができます。
このようにして、さらに競争力のあり収益性が高い企業が作られていくのだと思います。
松下電器(元パナソニック)の創業者である松下幸之助が、松下電器は何を作っている会社ですかと聞かれたら「松下電器は人間を作っています。その合間に、電化製品を作っていますと答えよ。」と言った逸話が残っています。
想定外の経営環境の変化に対応できる企業を作るには、人を育てることに尽きるというこの松下幸之助の思想は、経営の本質を見事に言い当てた、普遍の真理だと思います。
令和5年8月4日
アイネックス税理士法人
代表 川端雅彦
2023/08/04
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