税理士川端雅彦コラム

KAWABATA MASAHIKO COLUMN

vol.29「勝負は時の運?」

サッカーワールドカップ・アジア地区3位決定戦、日本全国のあちらこちらで「やったー!」という声が聞こえてきそうなほど劇的な勝利だった。壮絶な試合でもあった。大のサッカーファンである私も、感激のあまり涙ぐんでしまった。これ程までに日本中を沸かせ、元気づけた出来事も数少ないだろう。
さて、この試合の最大の功労者はだれか。私は、中田よりも、岡野よりも、城よりも、ゴンよりも岡田監督であると思う。この日本サッカー界の命運を賭けた大一番で、彼は見事なまでの采配ぶりを見せた。呂比須に換えてスタメン出場させたゴンが先制点を取り、カズと途中出場の呂比須が不調と見るや、城と岡野を出場させ、彼等もその期待に見事に応えた。精神的主柱であるエースのカズを換えることは「勇気ある決断」だったと思う。もし、結果が逆に出れば彼は一生不名誉な烙印を押されることになっただろう。このワールドカップ予選を通じ、彼等と彼等を目指すプレーヤーは大きな自信を得たことだろう。たとえどんな戦い方であったとしても、勝つことと、負けることは月とスッポン以上に違うことを実感しているに違いない。
また、話は変わるが岡田監督の采配は、組織を通じて「企業目的」を達成する経営者の人達にも「お手本」を提示してくれているものと思う。サッカーのことわざに「一つの勝利は多くの罪悪を隠す。そして、一つの敗戦がパニックの元になる。」というものがある。韓国戦の敗北は、まさにチームをパニックに陥れた。その時点で加茂前監督が選手に与えたテーマは「慎重かつ積極的に」であった。ところが、慎重論だけが選手の頭にこびりつき、その後は勝てない状況が続いた。一方、岡田監督の就任直後のテーマは「ファイトしろ。」であった。がけっぷちに立った選手達には、慎重論より積極論の方がよいと判断したのであろう。ところが結果的に、選手の気持ちが高ぶりすぎ冷静さを失い、ウズベキスタン戦では終了間際に同点にされ、勝利を手にすることができなかった。そこで岡田監督は頭を切り替え、次の韓国戦で与えたテーマは「冷静にファイトしよう」であった。このチームはリーダー不在、優等生の集団、冷めた世代と言われ、闘志がないと評価されていた。岡田監督は、これらの選手の特質を読み取り、良い面を引き出そうと「冷静に」という言葉で表現したのだろう。岡田采配の第一の教訓は「指導者の役割とは、組織の文化を読み取り、良い面を引き出すリーダーシップである。」ということであろう。能力があり真面目だが真剣でない「傾向」の高い世代に対するリーダーシップという面では「お手本」といえるだろう。
次に「不十分な情報から意志決定する。」ということである。ある番組で岡田監督は、「孤独でした。でも最後に戦略面における意志決定をするのは自分しかありません。」と語っている。たぶん、彼の回りから不確実で彼を迷わせる、いろんな情報が寄せられていたと思う。不確実な情報から仮説を立て、最悪の事態とその対処方法を想定しながら意志決定をする行動は、経営者のあるべき行動パターンと全く一緒だと思う。「意志決定に責任を負う」という彼の姿勢は、経営者として見習わなければならない。そして、「意志決定をする際に大胆にリスクを負う。」ことも参考にすべきことだと思う。エースである三浦カズを交代させるということは、同時にリスクを負うことであったはず。初めから、勝利が見えている場合を除いては、企業経営においてもリスクを負うことは、絶対に必要である。何かを手にしようと思えば、何かを手放さなければいけないのは、多くの企業家が体験していることであろう。岡田監督のあの場面での采配は、見事なお手本といえるのではないか。
勝負は時の運と言う。今回の日本の勝利も一見そう見えるかもしれない。しかし、この言葉が独り歩きしすぎ、その前に冷静に考え抜く作業がいかに重要であるか、を岡田監督は我々経営者に「テーマ」として突きつけてくれたと受け止めている。
「岡田監督、選手の皆さん、おめでとうございます。貴方達の快挙は日本中を奮い立たせてくれました。次は、フランスで大暴れしてください。がんばれ日本!」

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2003/09/17

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