運のいい人が沢山いる集団になるということ
我々人類を含む生物が今まで生き延びてきた理由を示すものとして「適者生存説」があります。つまり、「生物は環境に最も適したものが生き残る。」というものです。
それに対して、例えば一人の人間の一生ぐらいの短い時間の中では「適者生存」よりも「運者生存」つまり、運のいい人が、より生き残るのだという考え方の方が、当てはまるケースが周りにはたくさんあります。
経営の神様と言われるパナソニックの創業者である松下幸之助氏は、人を採用する面接の席で「あなたは、自分のことを運がいいと思いますか?」と質問し、「はい!」と答えた人だけを採用したそうです。(もちろん、その他の基準をクリアーした上でのことです。)
しかし、この運がいい悪いは、自分の意思ではどうすることもできず、文字どおり「運任せ」と思われるかも知れません。
ところが、最近の脳科学によると、この「運がいい人」には、共通した物事の捉え方、考え方、行動パターンがあるのだそうです。
そのことを、やさしく解き明かしたのが、最近読んだ「科学がつきとめた『運のいい人』」(中野信子著)という本で、お勧めです。
総じて言うと、運のいい人は、よりよく生きている。よりよく生きているからこそ、運が味方するというものです。
ここでは、紹介されている事例をすべて紹介することはできませんが、私の経験に合致する代表的なものを紹介すると、例えば運のいい人は「自分は運がいい」と決め込み、積極的に運のいい人と関わります。そのためには、当然、そういう人に出会う、話すということが日常とは違う行動をとる傾向が高いと言われています。
また、運のいい人は「自分のストレスのレベルを上げる」こと厭いません。敢えて困難に立ち向かうことも運のいい人の共通した行動パターンです。弊社の行動指針の中に「逆境にすら感謝する」というくだりがありますが、同様のことだと思います。
そして、運のいい人は、他の人と「共に生きること」をめざす、のだそうです。例えば、他者を思いやる心が豊かで、「利他行動」をとります。利他行動は脳の報酬体系を刺激するのです。人の脳はほめられたり、他者から良い評価を受けたりすると、お金を受け取った時と同じような喜びを感じるのだそうです。そういう利他的な行動が運を引き寄せると述べられています。
最後になりますが、運のいい人は世界の中心に自分をすえる。これって、ちょっと自己中心的な考え方のようですが、そうではなく、今の自分を変えようとするのではなく、「今の自分を最大限に生かす。」ということです。
お釈迦様が生まれたとき、天上天下唯我独尊(てんじょうてんげゆいがどくそん)という言葉を発せられました。世間では「彼は唯我独尊な人だなあ~」と言うと、周りを気にせずわが道を行く人と捉えがちですが、本当は「人間に生まれてきた我々が、最も尊いということを自覚し、その目的を成就するために精進せよ。」ということであり、そういう人間になりなさいという意味だそうです。
こういう自分自身が、この世に生を受けたことに感謝し、よりよく生きている「運のいい人たち」が沢山いる企業は、いいことが起こる確率が高いと信じて、運のいい人たちの集団をつくることが、企業経営における目に見えない競争力を強化する重要なことだと思います。
令和6年5月2日
アイネックス税理士法人
代表 川端雅彦
2024/05/07
- 雑感