税理士川端雅彦コラム

KAWABATA MASAHIKO COLUMN

vol.49「6人の盲人と象」

■Vol49 2002年11月20日
例えばあなたが、ある会社の経理部長で、経営トップから「我が社の利益は、過去3年間逓減している。とくに、今期は増収だが減益となっている。至急、財務体質の改善案をまとめてくれ。」と云われたら、どうするだろうか。
「そんなこと言われても、営業や製造の仕事は私の範囲外であり、管理費の経費の削減ぐらいしか手の打ち様が無い。」と考え、管理費の削減プランを提示するとしたら、帳簿つけ担当の域を出ていない。
そこで、一歩進んで、営業の責任者と製造の責任者に集まってもらい意見を求めたとしよう。
-営業責任者-
「営業部門は、利益率は低下しているものの、会社の売上予算を達成している。製造コストの引下げを図ることにより利益がでるようになるのではないか。」
-製造責任者-
「在庫ロスを防ぐために、極力少ロットで材料購買をしており、今の営業のあり方では、製造コストの引き下げは限界に来ている。営業の指示にもとづいて生産しており、とやかく言われる筋合いではない。また、われわれにとやかく言う前に本部の経費をもっと削減する方法は無いのか。」
これらの議論の風景は、どの会社にもよく見うけられるものであるが、結果としてなかなか解決策に結びつくことなく、努力の甲斐なく改善に結び付けられていないのではないだろうか。
この議論に欠落しているのは、会社の財務体質を改善するとは何かについて、きちんと定義されていないことである。
そして、もう一つ欠落しているのは悪化している要素は、なにかについて分析がなされておらず、改善機会について十分な掘り下げがなく、木を見て森を見ずの状況になっている。
このような場合、優秀な経理マンなら、どうするであろうか。
まず、財務体質の改善目標として「総資産(総資本)経常利益率の向上」と指標を採用してみる。
総資本経常利益率は、経常利益/総資産であらわされ、この比率が高いほど経営資産が効率よく経常利益に貢献しているといえる。
先ほどの議論でも、フローの一部だけが取り上げられており、ストック(資産)の視点が、完全に欠落しているので、この指標は全体を見る上で非常に役に立つ。
そして、経常利益、総資産という全体から、それらを構成する要素にわけ、ツリー上に分解していけば、いままで見えなかったことが見えてくるようになる。
例えば、経常利益=経常利益率×売上高であり、経常利益は営業利益率と営業外利益率にわけられ、営業利益率は、売上原価率と、販売費一般管理費率にわけられる。
さらに製造原価率、在庫変動率などの要素に分解していけばよい。
売上は、価格×数量に分解され、数量はマーケットのサイズとシェアに分解される。
そして、これらの指標の過去からの推移を時系列にならべ以下のような比較する表を作成するのである。
グラフ化すれば、より分かり易いものになるだろう。
              1998年 1999年 2000年 2001年 2002年 
−経常利益
  経常利益率
   営業利益率
    売上原価率
     製造原価率
      間接人件費率
      直接人件費率
     在庫変動比率
      etc
−売上
  価格
  売上数量
   シェア
   マーケットサイズ
−総資産
  総資産回転率
次に、一律に3%〜5%ぐらい改善されると仮定して、それぞれの総資産利益率の改善割合を抽出してみる。
例えば、売上については販売単価、数量をそれぞれ3%改善すれば、総資産経常利益率がどの程度向上するか、算出するのである。
これは一般的に感度分析といわれるが、同じ努力をするなら何に力を入れればいいか、理解できて非常に役に立ち全社レベルで共通の認識が持てることになる。
私共がクライアントの財務分析を行うと、単価改善の効果が最も高く、数量改善のそれよりも実に3倍以上あるケースがほとんどである。
そして、それらを作成して会議に臨み、、それぞれの要素について担当責任者に改善の可能性を具体的に検討してもらう。
 先ほどの例で言うと、単価改善の経常利益に対するインパクトの大きさを、営業担当が再認識することにつながり、売上予算を達成せんがためにダンピングをして販売している営業方法を見なおす切っ掛けに、なる可能性がでてくる。 
また、材料や外注費を現金払いにすれば、5%安く購入できる可能性があるなら、銀行借入の他、増資、もしくは、有形固定資産などの現金化により資金調達し、コストを抑える施策が提起なされるかもしれない。
しかし、これらは、製造責任者と財務責任者との共通の認識と、連携プレーがあってはじめて出来るものである。
その他にも製造と営業の連携プレーがないと、改善できないことがらもあるだろう。
もちろん、これらは現状の分析から考えられる具体的施策であり、必ずしも正しい答えではないが、少なくとも努力すべき方向性を投げかけ、限られた資源をどこに集中するかを決めることはできる。
 インドに「6人の盲人と象」という寓話があります。6人の盲人があるとき象を触ったときの話です。
象の鼻に触った盲人は「象はへびのようだ」といい、耳に触った盲人は「ウチワのようだ」といい、足に触った盲人は「木の幹のようだ」といい、胴に触った盲人は「壁のようだ」といい、尻尾に触った盲人は「ロープのようだ」といい、牙に触った盲人は「槍のようだ」といってお互いに自説を譲らなかったということです。
 もし、あなたが優秀な経理マンを目指すなら、各部署が6人の盲人にならないよう全体から部分を把握し論じる事が出来る技量をみにつける必要があるだろう。
*弊社では、総資本経常利益率から感度分析に至る財務分析を実施しております。
ご希望の方は、下記アドレス 川端雅彦 までメールにてご一報ください。

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2003/10/01

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