事業承継 Ⅰ【相続・贈与税】

2009年12月20日更新

Ⅰ.はじめに

事業承継対策を先送りにしていませんか?

対策をせずに放置していると、いざ事業承継という時に、「自社株式や事業用資産が分散してしまった」、「相続税が思いのほか高く、納税資金が足りない」、「相続を巡ってもめ事が起きる」、「取引先の信頼を得られない」、といった問題が生じ、最悪の場合、廃業に至ってしまいます。しかし「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」(以下、経営承継円滑化法)を活用することで、解決が図れる問題もあります。

そこで、今回から6回にわたって「事業承継」というテーマで、経営承継円滑化法の内容をご紹介していきたいと思います。

~予定しているテーマ~

第1回 経営承継円滑化法の概要(3つの支援策)

第2回 民法の特例(遺留分に関する特例)

第3回 納税猶予制度(概要)

第4回 納税猶予制度(要件)

第5回 納税猶予制度(手続)

第6回 金融支援措置

Ⅱ.経営承継円滑化法の概要(3つの支援策)


経営承継円滑化法では、中小企業の円滑な事業継続を図るため、「遺留分に関する民法の特例」、「金融支援」、「相続税・贈与税の納税猶予制度」の3つの支援策が設けられています。

1 民法の特例

円滑な事業承継のためには、後継者が自社株式や事業用資産を承継することが必要です。しかし民法では、相続人に最低限の財産を相続する権利「遺留分」を認めています。

中小企業の経営者の場合、相続財産の大部分が自社株式や事業用資産ですので、後継者にこれらの財産を集中させようとすると、他の相続人の「遺留分」を侵害してしまう可能性があります。結果として、相続紛争の原因となったり、事業用資産が分散してしまうことになります。

そこで、経営承継円滑化法では、一定の要件を満たす後継者が、一定の手続きを経ることを前提に、以下の民法の特例の適用を受けることができるようになりました。

(1)生前贈与株式を遺留分の対象から除外する。

贈与株式が遺留分減殺請求の対象外となるため、相続に伴う株式分散を未然に防止することができます。

(2)生前贈与株式の評価額を予め固定する。

後継者の貢献による株式の価値上昇分が遺留分減殺請求の対象外となるため、経営意欲が阻害されることがありません。

2 金融支援措置

後継者が経営権を取得するためには、後継者や会社が、自社株式や事業用資産を他の相続人から取得する必要があります。

この措置は以下の特例の創設により適用をうけることができるようになりました。

(1)中小企業信用保険法の特例

信用保証協会の保証付き融資において、通常の融資とは別枠での融資を受けることができます。

(2)株式会社日本政策金融公庫法の特例

 日本政策金融公庫で、通常より有利な利率での借入を受けることができます。

3 相続税・贈与税の課税についての措置

 税制面から円滑な事業承継を支援するため、相続税や贈与税に以下の特例が認められるようになりました。

 本来であれば、相続時・贈与時に課税される税金を、将来に繰り延べることができます。また、一定の条件を満たせば、納めなくてもよくなります。

この措置は以下の制度により、適用をうけることができるようになりました。

(1)非上場株式等の相続税の納税猶予制度

(2)非上場株式等の贈与税の納税猶予制度

これらの支援策の詳しい内容は、第2回から第6回でご紹介します。

Ⅲ.次回の予告

次回は「民法の特例(遺留分に関する特例)」についてご説明します。